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しかし自宅でクッキーを焼くにはオーブンがありません。園子は伊助に内緒で、米国に高価なオーブンを発注したのです。
大正6年春、米国からオーブンが届くと、園子は叱られるのを覚悟で伊助に打ち明けました。オーブンの値段は138円。当時の家族の1ヶ月の生活費をゆうに超える額でした。
しかし夫の返事はたった一言――。「割に安いねえ…!」 英語が得意な伊助は、クッキーに関する欧米の原書を手に入れては訳し、園子も教わったレシピを日本人好みに改良するべく試作を繰り返しました。原料の配合や生地の熟成期間、火加減を研究するため徹夜することも度々だったといいます。クッキー作りはいつしか夫婦二人の「共同研究」となっていきました。
そうして焼きあがったクッキーは、ロイド夫人に「もう教えることはない」と言わしめるほどの出来栄えだったそうです。このとき二人は、現在のスペシャル・クッキーズに入っている14種類を含めた約30種類のクッキーを、すでに完成させてしまったのです。
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